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安倍官邸と加計学園の闇(サンデー毎日 2017年7月9日号)



「指摘があれば、その都度真摯に説明賣任を果たす」。記者会見で、安倍晋三首相は加計学園問題について国民にこう約束した。直後に腹心の部下の萩生田光官房副長官に関する新たな文書が飛び出したが、果たして約束は?

安倍首相は6月19日夕、恒例の通常国会閉会(18日)後の記者会見に臨み、加計学園(岡山市北区)の獣医学部新設問題について、調査に時間がかかったことをわびた。

世論調査で、内閣支持率が急落したことが背景にあるのは言うまでもない。森友学園(大阪市淀川区)の問題と併せ、自身にまつわる疑惑の追及に時間
が割かれた国会について、またも野党を引き合いにこう釈明した。

「国民に大変申し訳なく感じている。印象操作のような議論に対して、つい強い口調で反論してしまう。そうした私の姿勢が、結果として、政策論争以外の話を盛り上げてしまった」まるで反省の色が見えないのだが、その数時間後、追い打ちをかけるように「爆弾」が炸裂した。

NHKの報道番組「クローズアップ現代+」が、文部科学省作成の新たな文書の存在をスクープしたのだ。

「10/21萩生田副長官ご発言概要」と題された文書の中身は次の通りだ。〈和泉補佐官からは、農水省は了解しているのに、科省だけが怖じ気づいてい
る、何が問題なのか整理してよく話を聞いてほしい、と言われた。官邸は絶対やると言っている〉〈総理は「平成30年4月開学」とおしりを切っていた〉

生々しい指示や説明が並んでおり、想像で書けるような内容ではない。

文面からは、閣議決定された獣医学部新設4条件を重視し、慎重姿勢を崩さない文科省に対し、萩生田氏がせかしているように読み取れる。

「和泉補佐官」とは、和泉洋人首相補佐官である。文科省は翌日、文書が省内の共有フォルダーに存在することを認めたが、全面的に萩生田氏をかばった。

「個人のメモ。萩生田氏の発言でないものも含まれている」(松野博一文科相)文科省によると、常盤豊同省高等教育局長が昨年10月21日、萩生田氏と面会した後、専門教育課課長補佐の女性が内容を聞き取ってメモを作成。

「誤って共有フォルダーに保存」し「複数の職員にメールで送信」もしたが、あくまで「個人メモ」と主張している。

2人とも優秀と評判の官僚なのだが、詳細について記憶はあいまいなのだという。

萩生田氏の事務所も文書について、全面否定するコメントを発表している。

「一担当者が内閣府などや省内のさまざまな人から聞いた伝聞など不確かな情報を混在させて作った個人メモ。著しく正確性を欠いたものであるとの説明とおわびが文科省からあった」

閉会中審査や臨時国会召集を求める野党は当然、「萩生田氏を証人喚問すべきだ」と勢いづいた。閉会中も断続的に開かれている民進党のヒアリングでは、説明を渋る内閣府の担当者に対し、同党議員が「総理は真摯に説明責任を果たす、と言っているじゃないか」と迫るのがお約束となりつつある。

首相側近で言葉は軽い萩生田氏

首相の側近とされる萩生田氏は、東京都八王子市が地元。明治大卒業後、小野清子参院議員(当時)の秘書を経て同市議、都議に。

衆院初当選は2003年だ。地元関係者が振り返る。

「まだ被選挙権もなかった頃、市内に自分で作ったポスターを貼りまくっていました。割れかけた卵のデザインに、『早く出てこい萩生田光一』とのコピーが添えられていた。都議を1期で切り上げ、うまく国政進出の波に乗りました」

地元の評判は悪くないようだが、一方で「言葉の軽さ」で物議をかもしてきた。永田町関係者が語る。

「野党の国会対応を『田舎のプロレス』『茶番』とこき下ろして、撤回したのは記憶に新しい。安倍首相について『お坊ちゃま育ちの割には』と口を滑らせたこともありました」

文科政務官を務めた文教族でもある。09年の落選後は、加計学園が運営する千葉科学大の客員教授となった。

13年5月の自身のブログには、安倍首相の河口湖の別荘で加計孝太郎理事長を交えてバーベキューを楽しむ写真が確認できる。

加計氏との関係について、萩生田氏の事務所は「12年の国政復帰後、加計氏とお会いしたのは河口湖の首相別荘を含め2回程度。個人的交流はないし、
親しくお付き合いもしていない」と説明する。

実は、加計学園と萩生田氏に関し、別のもう1枚の文書が早くから明らかになっている。「10/7萩生田副長官ご発言概要」と題されたものがそれで、一部報道機関が入手。

文科省の再調査では、この文書は「存在が確認されなかった」となっているが、体裁は「10/21」文書とほぼ同じ。

異なるのは、萩生田氏が「誤解を招くので無理をしない方がいい」と慎重姿勢を示したとされることだ。二つの「萩生田発言文書」について、前川喜平.前文科事務次官は6月23日の記者会見で、こう解説した。

「萩生田氏は文科省からみたら頼りになる文教族の先生。(獣医の需給を見極めるために)農林水産省や厚生労働省との調整をお願いしていたわけです。在職中に私も目にした(昨年) 10月7日のペーパーで、萩生田氏は『自分が調整する』とおっしゃっている」

だが、2週間後の文書で、萩生田氏は態度を一変させている。ここで登場するのが和泉首相補佐官だ。彼は、次官時代の前川氏に「総理は言えないから代わって言う」と、獣医学部新設をせかしたとされる。前川氏が続ける。

「和泉補佐官が全体のシナリオを書いていたとみています。調整を期待していたのに(萩生田氏は)逆に文科省を説得する側に回ったということです」
関係者が「責任回避」を図る中、割を食っているのが一連の文書の大半を作成した例の女性課長補佐だ。

関係者によると、彼女は青山学院大卒で06年入省のキャリア官僚。義務教育やスポーツ行政にも携わり、3年前から現職を務める。

政策説明などで面識のある議員は与野党問わず「極めて優秀」と評価するが、ネット上では「文書を流出させた張本人」と、あらぬ疑いも持たれている。

元文科官僚の寺脇研氏はこう憤慨する。「私のかつての部下が、彼女の上司だったのですが『手堅い仕事をする彼女がいてくれたので助かった』と言っていましたよ。

苦しい言い訳でしょうが、文科省の説明では、彼女がメモも正確に作成できない職員ということになってしまう。政治家や上層部の保身のために、弱い立場の職員を犠牲にするのは許されない。

文科省は、さらに正直に説明すべきだ。都議選の影響もあってか、公明党からも閉会中審査に理解を示す声が聞かれるようになったが、官邸も自民党も重い腰を上げようとしない。

安倍首相はそろそろ、自分の発言に責任を取って「真摯な説明」を行うべきだろう。

「前川前文科事務次官インタビュー」をボツにしたNHKの”忖度”

NHK職員が嘆息する。「加計学園問題は『朝日新聞』のスクープのように受け止められていますが、実はNHKが先行しました」

5月17日付『朝日新聞』は1面で、加計学園の獣医学部新設計画に絡む「官邸の最高レベル」文書の存在. .を明らかにしたが、実は前夜11時台のニュースでNHKも同文書について報じていたのだ。

だが、別の同局記者は憤慨する。「画面に映し出された文書は、肝心の『官邸の最高レベル』の部分が黒塗り。核心部分を報じなかったわけで、政権に都合の悪い情報を隠したとの批判は免れない。現場は、局上層部による政権への過剰な忖度では、と感じています」

また、放送時間帯について前出の記者が解説する。「ニュース枠は、視聴率によって格が暗黙の了解で決まっている。午後7時、同9時、朝の『おはよう日本』、午後11時の順です。影響力の低い時間帯にとどめようとした意図が透けて見えてしまう。

不可解な占自主規制は他にもある。前川喜平.前文科事務次官は「NHKは5月25日の記者会見以前に、加計学園問題について私のインタビューを収録し
ましたが、いまだに放送されていません」と明かす。

NHKでは、政治部や社会部などのデスクがメニューを提示し、ニュース番組を制作するプロデューサーらがラインアップを決めるという。

同局のベテラン報道関係者が指摘する。「記者セクションを牛耳る政治部の意向が強く反映し、社会部の記者が自由な報道ができない状態をつくっている」

「森友学園事件」クライマックスは7月

6月21日午後8時すぎ。東京都千代田区内神田の路地に面し30人も入ればいっぱいとなる居酒屋は、ほぼ満席状態だった。

雨による交通機関の乱れのため、予定より1時間遅れで大阪からその男性が到着した。

「昭恵夫人にいただいた寄付をお返ししたい」こう切り出した男性は、前森友学園理事長、籠池泰典氏だ。

この居酒屋は安倍晋三首相の妻昭恵氏が経営する店。籠池氏は安倍晋三記念小学校建設について、昭恵氏から寄付されたと主張する100万円を返しにきたという。

「この店は安倍事務所とは何の関係もありません。他のお客様に迷惑ですから」女性スタッフと数分間の押し問答の末、受け取りを拒否された籠池氏。

店外で報道陣に取り囲まれると「学校建設ができなくなったので、いただくわけにいかない。寄付はしていないとおっしゃるけど、僕はもらっている」と語った。

この後、渋谷区富ケ谷の安倍首相の私邸にも赴いた籠池氏は、警護の警官に来意を告げたが、やはり返却はかなわなかった。

この2日後、大阪地検特捜部は、大阪府と国から補助金を不正受給したとして、詐欺と補助金適正化法違反の容疑で森友学園など関係先を家宅捜索した。

捜査関係者によると、容疑の対象は、学園運営の幼稚園に交付された府の補助金と、大阪府豊中市の国有地で開校を計画していた小学校への国土交通省の補助金。

府の調査では、籠池氏が理事長時代、複数の府の補助金計6000万円余りを不正受給したとされる。

「特捜部は、安倍首相の記者会見が終わるのを待つかのように夕方に捜索に入り、終了は翌朝4時。籠池家だけでなく、学園職員の携帯電話まで押収しました。問題の本質は、なぜ国有地が8億円も値引きされたのかという点。捜査が籠池氏個人の問題にしか及ばなければ、検察も批判は免れないでしょう」

捜査関係者は「現在、押収品の分析を進めており、捜査が山場を迎えるのは7月でしょう」とし、国有地売却の経緯にメスが入る可能性には否定的だ。

「国策捜査だ」と主張する籠池氏。寄付金返却行脚が、「最後の一剌し」となるのだろうか。


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